カバとかサイとかその類のもの

コミュニケーション不能につき不和を極め、至極冷静に家を放り出し・出された人の親たち。世はコロナ時代。23時閉店と書かれた看板を数回確認し、趣味の悪いネオンが煌々とひかる店に頭を差し込むと、涙袋の位置に引かれた白くてギトギトした一直線が印象的な目元を演出しているお姉さん、に「ごめんなさぁい終わっちゃっててぇ」と断られてしまい、仕方が無いのでコンビニで発泡酒と煙草を買って通りをうろついた。駅前に出て、家路へと急ぐまともな勤め人風の男女の往来と縁のぼんやりした月を交互に眺めながら酒を飲んでいたら、何だかよく見えすぎるな、と思い、恥ずかしくなって眼鏡を外して、ため息をついた。お尻が冷たい。帰ろう。なんだか当然のように追い出されたので当然のように悔しく思ったのだが、その悔しさのことは阿呆みたいに直ぐに忘れてしまっていた。友だちとメールしていたら、あそこは私の家でもあるのだった、とその当然のことを思い出した。自宅へ向かう。歩きながら煙草を二本吸い、家の前の長い階段で立ち止まる。そこでまた二本吸い、ぐるぐる巻きにしたマフラーがしっかりと煙の匂いを吸い取ったことを確認してから、階段を昇った。

コートを着たままトイレに入る。冷えきっていたらしい、全然出られなかった。途中でトイレットペーパーを補充して、また個室に籠る。

やっとトイレから出られた。同じ家にいるのに別室でスマホによる文章の応酬。もうあなたのことよく分からないからってティッシュ箱とかマヨネーズとか投げたりしないし、感じ悪いんだよ死ねみたいなことを感じ悪く言ったりしないから、と言って部屋に呼び寄せた。

突き詰めて話したが、やっぱりこの家庭は「どうかしていた」の産物で、重くてばかでかい。で、しんどい。愛とか恋とかの正体や性質が明確に分かっちゃった気がした。